フランが1位になった件で

Atelier Members by Morihide Yoshida

2025/08/31 22:42

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先日、AD25というフランスでは比較的知られた媒体で「フランのベスト9」というランキングがあり、1位に紹介していただきました。

AD25とは、AD(Architectural Digest)France の25周年を記念した特別企画で、高級インテリア・建築・デザイン・芸術・ライフスタイル誌です。取材に来られたわけではなく、販売スタッフが記事のライターの写真を見て、時々来店されるお客様だと分かった程度でした。それでも、シリル・リニャックやピエール・エルメと並ぶ中で1番最初に書かれるのは、何度でも嬉しいことです。

 

フランスの方なら、このようなランキングを読んだことがある方も多いかもしれません。フランはフランスでは庶民のおやつで、日本で例えるならどら焼きや大福のようなシンプルな菓子です。モリヨシダがオープンする前は、このようなフランのランキングはほとんどなかったと思います。フランス人パティシエやライターに聞くと、ここ10年でフランの高級化が進んだそうです。

 

なぜ高級化が進んだのかと尋ねると、多くのパティシエやライターは口をそろえてこう言います。「モリヨシダが作り始めたことで、他のパティシエもより高級でオリジナルなフランを追求するようになった」と。Fou de Pâtisserie(日本でいう café sweets 的な雑誌)の編集長も同じことを言っていました。

僕自身は、高級にしようと思ったことも、意図もありません。ただ、美味しい王道のフランを作りたかっただけです。

オープンして1年も経たない頃、Φ15cmのホールサイズのフランしか作っていませんでしたが、急に問い合わせが増えました。ラボのフランス人パティシエールから「クリスト・フミシャラク氏のインスタに載ってたからでしょ」と普通に言われたくらいです。お客様から「カット販売はないのか」という問い合わせが増え、現在のΦ20cmをカットして販売するようになりました。その結果、Φ15cmは販売を中止せざるを得ないほど売れるようになりました。

ちょうどその頃、人気のお菓子雑誌 Fou de Pâtisserie にレシピが掲載され、「モリヨシダといえばフラン」というイメージが少しずつ定着しました。当初は、フランのようなシンプルなお菓子ではなく、Beige や M といったクリエーションしたガトーをもっと見てもらいたいという思いもあり、フランの人気を心から喜べない自分もいました。クロワッサンやパン・オ・ショコラ、ブリオッシュなどのヴィエノワズリーも好きですが、その頃からそちらに集中することは諦めざるを得ませんでした。

今では毎週末、朝からΦ20cmのフランを25台焼いています。このシンプルな菓子の中に、味・食感・香りなど、菓子の要素すべてが詰まっていて、モリヨシダの世界観を表現してくれる一品です。モリヨシダが「グランクラシックなパティスリー」と言っていただけるのも、美味しいフランのおかげかもしれません。これからも、しっかり作り続けたい一品です。

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